おうぎの
初出:「面白倶楽部」大日本雄辯會講談社、1954(昭和29)年5月号
書き出し
一「うんいいね、静かな趣きだ」石川孝之介はそう云って、脇にいる角屋金右衛門に頷いた。——なにを云やあがる。栄三郎は心の中でせせら笑った。孝之介は、藩の家老石川舎人の長男だという。年は栄三郎より五つ六つ若いだろう、二十六七歳と思えるが、家老職の子らしいおちつきと、すでに一種の威厳のようなものが備わってみえる。躯も顔もやや肥えてまるく、色が白く、だがその大きな(またたきをしない)眼には、意地の悪そうな…
ba5194e78df6さんの感想
こんなに、清々しい出会いと別れ、感動しました。