青空文庫

「銀鼎」の感想

銀鼎

ぎんかなえ

初出:「国本 第一巻第七号」国本社、1921(大正10)年7月1日

鏡花42

書き出し

一汽車は寂しかつた。わが友なる——園が、自から私に話した——其のお話をするのに、念のため時間表を繰つて見ると、奥州白河に着いたのは夜の十二時二十四分で——上野を立つたのが六時半である。五月の上旬……とは言ふが、まだ梅雨には入らない。けれども、ともすると卯の花くだしと称うる長雨の降る頃を、分けて其年は陽気が不順で、毎日じめ/\と雨が続いた。然も其の日は、午前の中、爪皮の高足駄《たか

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