ひたのさらやま
初出:「工藝 第九号」1931(昭和6)年9月5日
書き出し
一筑紫の平野を車は東にと走る。見渡す限り金色に光る菜の花の敷物である。あの黄色を好んだ画家ホッホが見たら狂喜したであろう。不思議にも美しい自然は絵画を通して私たちの眼に入る。田主丸や吉井を通れば、土塀や土蔵の家々が町の古い物語りを話しかける。これも泥絵の画工たちが重々私たちに「覚えよ」といってくれた題目である。だが私の心が急ぐのは国を一つ越えた先の日田である。平野の尽きたところに筑後川が迸る。河は…