青空文庫

「苗代川の黒物」の感想

苗代川の黒物

なえしろがわのくろもん

初出:「工藝 第四十一号」1934(昭和9)年5月14日

宗悦15

書き出し

一何の因縁によるのか、ここでも上手の白物と下手の黒物とが対峙する。対峙するというより、むしろ白物のみが存在するという方がいいかもしれぬ。黒物の方は振り向く者がない。薩摩焼といえば、今は白陶器に定まっている。店に並べて窯の名を誇るのも、遠く海外に出て名を博したのも錦襴手のその白物である。近い鹿児島の街ですら黒物はほんのわずかよりしか扱わない。白釉の方は膚が柔かで色温く、誰もの嗜好に投じると見える。黒

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