青空文庫

「眠り人形」の感想

眠り人形

ねむりにんぎょう

初出:「少女倶楽部」1929(昭和4)年2月

野村胡堂20

書き出し

一「お母様、泣いていらっしゃるの?」よし子は下からのぞくように、母親の顔を見上げました。「いえ、泣きはしません。なんにも泣くようなことはないじゃありませんか」「でも、お父様の形見が一つずつなくなってゆくのが心細いって、昨日叔父様へ泣いておっしゃったじゃありませんか」「この子はまあ」母親は顔をそむけて、そっと涙をふきました。お正月の銀座はまだ宵の口ですが、身を切るような寒い風が街の石畳の上に、後から

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