かりょうきこう
初出:「山岳」1916(大正5)年12月
書き出し
『嘉陵紀行』は徳川幕府の頃、三卿の一であった清水家の用人村尾正靖の著である。号を嘉陵と称した所から其記行文集を『嘉陵紀行』と唱えるが、実は後人の名付けたものである。非常に旅行が好きで、暇さえあれば江戸附近の名所旧跡を探って楽しんでいたことは、其紀行文から推知することが出来る。殊に吾々に取って懐しく思われるのは、大の山岳宗徒であったことである。「府中道の記」の一節には下石原、上石原などを過行。この辺…