青空文庫

「かんかん虫は唄う」の感想

かんかん虫は唄う

かんかんむしはうたう

初出:「週刊朝日」1930(昭和5)年10月号~1931(昭和6)年2月号

吉川英治246

書き出し

木靴「食えない者は、誰でもおれに尾いて来な。晩には十銭銀貨二ツと白銅の五銭玉一ツ、みんなのポケットに悪くねえ音をさせてやるぜ」かんかん虫のトム公は、領土の人民を見廻るように、時々、自分の住んでいるイロハ長屋の飢餓をさがし歩いた。彼は、貧民街の同胞たちから、長屋のプリンスの如く人気があった。事こころざしと違って、二年や三年食いはぐれて見ても、外国のようで日本のようで、金儲けで埋まっているようで、金を

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