しょうもんだいだいもんだい
初出:「現代」大日本雄辯會講談社、1927(昭和2)年6月
書き出し
津島君の子爵病は長いことだった。一杯やると発作的に催す。遠く王政維新廃藩置県の頃に溯って、「祖父がその時好機会を逸しなかったら、僕も今頃は子爵の御前様で納まり返っていられるのになあ」と口惜しがるのを常とした。生れてもいない昔のことを今更何と言っても仕方あるまいに、そこが酒の上だ。酔えば無暗に喧嘩を吹っかける奴さえあるのだから、五十年前の愚痴なら先ず/\好い酒癖の部類に属する。「又始まったぜ」と友達…