かっか
初出:「面白倶楽部」1925(大正14)年8月
書き出し
私の家は両隣りとも陸軍大佐である。予備か後備か知らないが、盆栽を弄ったり謡曲を唸ったりして、先ず悠々自適というところだ。目黒もこの界隈は筍と共に軍人の古手が多い。丘麓の片側町三十何戸は半数まで陸軍将校の侘住いである。そうしてそれが大抵中佐か大佐の恩給取りだ。東京市外の地価が未だ斯うほど騰貴しなかった頃、この辺一帯の持主が畑と孟宗藪を百坪乃至二百坪に区切って貸地にした。これは昨今市内の華族さまがやっ…