みどりのたね
初出:緑の種子「朱欒 2巻9号」1912(大正元)年9月1日
書き出し
緑の種子種子はこれ感覚の粋、緑は金の陰影にして、幽かに泣くはわが心。種子を哀しめ、よきひとよ、冷たく、小さき芥子のたね、その一粒に心せよ、歔欷けかし、日の光。種子はこれ霊魂の粋、生ける宝石、「時」の秒、金と緑の夜の秘密、淫慾の芽の潜伏所、阿片の精。種子を哀しめ、よきひとよ、緑は色の粋にして、智慧と不思議と生滅の見えざる悲劇、万華鏡。消え去り難き幽霊の芥子の緑に泣くごとく、裏切したる歓会の醒めて哀し…