青空文庫

「背負揚」の感想

背負揚

しょいあげ

初出:「趣味 第三巻第一号」趣味社、1908(明治41)年1月1日

徳田秋声27

書き出し

鐘の音さへ霞むと云ふ、四月初旬の或長閑な日であつた。私は此春先——殊に花見頃の時候になると、左右脳を悪くするのが毎年のお定例だ。梅が咲いて、紫色の雑木林の梢が、湿味を持つた蒼い空にスク/\透けて見え、柳がまだ荒い初東風に悩まされて居る時分は、濫と三脚を持出して、郊外の景色を猟つて歩くのであるが、其が少し過ぎて、ポカ/\する風が、髯面を吹く頃《こ

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