青空文庫

「蒼白き巣窟」の感想

蒼白き巣窟

あおじろきそうくつ

初出:「雄辯 第十一巻第三号」講談社、1920(大正9)年3月号

室生犀星111

書き出し

私はいつも其處の路次へ這入ると、あちこちの暗い穴のやうな通り拔けや、墨汁のやうな泥寧の小路から吐き出される種々な階級の人々を見た。職工、學生、安官吏、または異體の知れない樣々な人々が、みんな醉つぱらつて口々に何かしら怒鳴つたり喚いたりしながら、同じ路次から路次を繩のやうにぞろぞろと群をつくつて、熱心な眼つきで、その路次の家々の障子硝子の内に、ほんのりと浮いてゐる白い顏を見詰めてはあるいてゐた。家々

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