青空文庫

「椰子の樹」の感想

椰子の樹

やしのき

初出:「芸文 四ノ八」1913(大正2)年8月

上田3

書き出し

われらが故里の國の樹木は、すべて人間のやうに直立してゐて、しかも不動である。其根を土に突込んで、腕を廣げたままでゐる。ここはさうでない。靈木榕樹は單獨に聳えたつのではなく、多くの絲を吊下げて、地の胸を撫探し、宛も自ら築きたつ殿堂のやうだ。しかしこれから椰子の樹のことを語らう。この樹には枝が無い、幹の頂上に椰子の葉の房を翳してゐる。椰子の葉は勝利の章、中空高く、梢の敷桁となつて、光明の中に搖動きつつ

1 / 0