青空文庫

「仮面」の感想

仮面

かめん

初出:「文章世界 第十一巻第七号」1916(大正5)年7月1日

正宗白鳥29

書き出し

一五月も末になつてゐるのに、火鉢の欲しいほどの時候外れの寒さで、雨さへ終日降りつゞいた。午過ぎから夜具を被つて横になつて、心を落着けようと努めてゐた馬越は、默してぢつとしてゐればゐるほど、頭の中の狂暴に堪へられなくなつた。其處等にある家具を片端から打壞すか、誰れかを打つか蹴るかしたなら、いくらか頭が輕くなりはしないかと思はれた。右へ轉んだり左へ寢返つたりしてゐたが、少しも睡りは催されなくつて、電燈

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