青空文庫

「銭形平次捕物控」の感想

銭形平次捕物控

ぜにがたへいじとりものひかえ

009 人肌地藏

009 ひとはだじぞう

初出:「オール讀物」文藝春秋社、1931(昭和6)年12月号

野村胡堂34

書き出し

一かねやす迄を江戸のうちと言つた時代、巣鴨や大塚はそれから又一里も先の田舍で、田も畑も、武藏野の儘の木立も藪もあつた頃のことです。庚申塚から少し手前、黒木長者の嚴めしい土塀の外に、五六本の雜木が繁つて、その中に、一基の地藏尊、鼻も耳も缺け乍ら、慈眼を垂れた、まことに目出度き相好の佛樣が祀られて居りました。尤も、板橋街道の直ぐ傍で、淋しいと言つても、半町先には町並らしいものがあり、黒木長者に出入する

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