じゃくまく
書き出し
たとふれば戦ひ果てぬ、日は暮れて二時を経ぬなまぐさき荒野の中に双の眼を弾丸に射られてなほ黒き呻吟をしのび、よこたはる負傷の兵の勇しきわかき心に、秘めつゝむ苦痛遂に鈍色の寂寞の気を吸ふがごと嗚呼われこゝに。くらがりの冷えたる室にひとり居ておもひ沈めば、空想は蠑螺の殻の底つ闇たどるがごとく、鬱憂ははた南蛮の夜深き荒磯の上に鋭き銛を腮にうけて横はる粗膚鮫の断末魔——濁りゆく眼に無辺なる闇を見るごと。愛消…