おもいで
書き出し
父ぎみはしはぶき二つ、母ぎみはそよ一雫、瀬戸の海、東をさしし三日まへに我を見ましぬ。世馴れざる野がくれわらべ、手文筥を封じもあへず、ゐざり出て閾の端の柱抱き面かくしぬ。いとほしや小き学生いくとせを東の京の旅に寝ね旅にねざめて文のわざいそしまむとや。口軽く胸冷やけき 旅館女の待遇ぶりに、慨きては、雨の夕の欄に、おゝ、何のおもひで。いとほし、と涙もろに、叔母ぎみは守袋をてづからにやさしうかけて、わが背…