青空文庫

「哀音」の感想

哀音

あいおん

書き出し

——汽車の窓にて夏の日の午さがり、我が汽車は物憂げに黒き煙を息吹きつゝ、炎天の東海道を西へ馳す。世ゆゑ、はたわれからの黒熱に膿み爛れ、灰汗の洪水の胸底の政の庁を失ひし病人なれば、天地の眺望ことごと灰濁みて、あゝうたてしや、ひたぶるに、涙ぞ落つる。乗合は背と背肩犇々とすりあひぬ。近江を過ぎて京ちかき山科や、竹の入日に、鬱憂のこゝろは重く、倦じ疲れたる目はひと目線路の砂に——あゝこの時、胸はまた膿みて

1 / 0