青空文庫

「機密の魅惑」の感想

機密の魅惑

きみつのみわく

初出:「踊る影絵」柳香書院、1935(昭和10)年2月

大倉燁子47

書き出し

1「ある夫人——それは私の旧友なのですが——からこうした手紙を度々受取らなかったら、恐らくこの事件には携らなかったろうと思います」S夫人は一束の手紙の中から一つを抜き出して渡してくれた。それは藤色のレター紙に細かく書かれたものであった。S夫人!私はもうすっかり疲れてしまいました。こんどの任地では徹頭徹尾失敗です。夫の愛は彼女に奪われ、在留民からは異端者のように白い眼で睨まれ、私のすることは、善かれ

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