青空文庫

「鉄の処女」の感想

鉄の処女

てつのしょじょ

初出:「踊る影絵」柳香書院、1935(昭和10)年2月

大倉燁子53

書き出し

1寒い日の午後だった。私は河風に吹かれながら吾妻橋を渡って、雷門の方へ向って急ぎ足に歩いていた。と、突然後からコートの背中を突つくものがあるので、吃驚して振り返って見ると、見知らない一人の青年が笑いながら立っていた。背の高い、細長い体に、厚ぼったい霜降りの外套を着て、後襟だけをツンと立てているが、うす紅色の球の大きなロイド眼鏡をかけている故か眼の下の頬がほんのりと赤味をさしている。彼は吸いかけの煙

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