しけい
初出:「ユウモレスク」中央堂、1924(大正13)年8月
書き出し
一今日も千日前へ首が七つかゝつたさうな。…昨日は十かゝつた。‥‥明日は幾つかゝるやろ。‥‥こんな噂が、市中いツぱいに擴がつて、町々は火の消えたやうに靜かだ。西町奉行荒尾但馬守は、高い土塀に圍まれた奉行役宅の一室で、腕組みをしながら、にツと笑つた。『乃公の腕を見い。』彼れは腕は細かつたが、この中には南蠻鐵の筋金が入つてゐると思ふほどの自信がある。其の細い手の先きに附いてゐる掌が、ぽん/…