青空文庫

「東光院」の感想

東光院

とうこういん

初出:「文章世界」1914(大正3)年1月

上司小剣58

書き出し

一東光院の堂塔は、汽動車の窓から、山の半腹に見えてゐた。青い木立の中に黒く光る甍と、白く輝く壁とが、西日を受けて、今にも燃え出すかと思はれるほど、鮮やかな色をしてゐた。長い/\石段が、堂の眞下へ瀑布を懸けたやうに白く、こんもりとした繁みの間から透いて見えた。『東光院て、あれだすやろな。』お光は、初めて乘つた汽動車といふものゝ惡い臭ひに顏を顰めて、縞絹のハンケチで鼻を掩ふてゐたが、この時漸く斯う言つ

1 / 0