おにぎりのあじ
初出:「暮しの手帖」1956(昭和31)年9月5日
書き出し
お握りには、いろいろな思い出がある。北陸の片田舎で育った私たちは、中学へ行くまで、洋服を着た小学生というものは、誰も見たことがなかった。紺絣の筒っぽに、ちびた下駄。雨の降る日は、藺草でつくったみのぼうしをかぶって、学校へ通う。外套やレインコートはもちろんのこと、傘をもつことすら、小学生には非常な贅沢と考えられていた。そういう土地であるから、お握りは、日常生活に、かなり直結したものであった。遠足や運…
2d5da82a7132さんの感想
贅沢で便利になった世の代わりに置いてきた、幼い頃の思い出。 もう二度と同じ味に出逢えないだろう切なさ。情景描写が素晴らしく湯気が見えた気がする。