てんぐ
初出:「現代」1922(大正11)年12月号
書き出し
一城下の町なみは、古い樹木に囲まれていたため、よく、小間使いや女中、火の見仲間などが、夕方近い、うす暗がりのなかで、膝がしらを斬られた。何か小石のようなものに躓ずいたような気がすると、新月がたの、きれ傷が、よく白い脛に紅い血を走らせた。それは鎌いたちに違いないと人々は言っていたが、その鎌鼬という名のことで、赤星重右のことが、どういう屋敷うちでも、口の上にのぼった。城下の北はずれの台所町に、いつごろ…