とらわれびと
初出:「文章世界」1908(明治41)年11月号
書き出し
山奥である。右にも左にも山が聳えている。谷底に三人の異様な風をした男が一人の男を連て来て、両手を縛って、荒莚の上に坐らせて殺そうとしている。三人の悪者の眼球は光っていた。莚の上に坐らせられた男は汚れた破れた着物を着て顔には髭が延びて頭髪の長い痩せた男だ。悪者は強盗であって、捕われた男は何んでも猟師か何かであるらしい。山奥で吹く渓風が身に浸みる。季節は秋だ。岩間には木の葉が血を滴らした様に紅葉してい…