くらいそら
初出:「早稲田文學」1908(明治41)年10月号
書き出し
一太い、黒い烟突が二本空に、突立ていた。その烟突は太くて赤錆が出ているばかりでなく、大分破れて孔が処々にあいている。ちょうど烟突は船の風取のようだ——私が曾て日清戦争や日露戦争に行って来た軍艦の砲弾に当って破れた風取や捕獲した敵艦の風取だというものを見たことがあるが、それとちょうど同じように破れている、その隙間から青空が洩れて見える。しかも二本の烟突は五六間位離れて相並んで石油鑵のブリキ板で葺いた…