青空文庫

「性に眼覚める頃」の感想

性に眼覚める頃

せいにめざめるころ

室生犀星102

書き出し

大正八年十月私は七十に近い父と一しょに、寂しい寺領の奥の院で自由に暮した。そのとき、もう私は十七になっていた。父は茶が好きであった。奥庭を覆うている欅の新しい若葉の影が、湿った苔の上に揺れるのを眺めながら、私はよく父と小さい茶の炉を囲んだものであった。夏の暑い日中でも私は茶の炉に父と一緒に坐っていると、茶釜の澄んだ奥深い謹しみ深い鳴りようを、かえって涼しく爽やかに感じるのであった。父はなれた手つき

2021/04/05

ひまわりさんの感想

この話の中に出てくる性的欲求や性欲は、「エロ」や「スケベ」ではなく 「妖艶」や「官能」と言ったニュアンス。 そのため、女性の行動ひとつひとつの描写が美しくかつ丁寧に書かれている。 性と生と死が渦巻く、まさに当時の少年時代の話

2021/03/29

b53e79cfe52cさんの感想

湿っぽい金沢、清い流れの犀川、お寺と郭に囲まれた街の中で多感な青春時代が過ぎゆく。結核による死さえも柔らかく包み込んで物語は展開する。全ての人に我が青春を想い出させるであろう。

2020/11/02

19双之川喜41さんの感想

 若い血潮が 逆流するような 青春の真っ只中にいて 友人が 女の子に ちょっかいを出すのを 呆気(あっけ)にとられて 傍観しているけど 井戸の水は荒いからと 父に言われ 柔らかな川の水を 汲みに行き 親子で 茶を味わったりもする。

2018/07/29

いちにいさんの感想

美人が犯罪を犯しても、許されるような気がする、気持ち。 わかる。 芸術は美しく、芸術の前では公然猥褻も違法性は阻却される。 主人公が賽銭泥棒の女を庇うシーンが印象的だった。手紙で警告する。素直に改心する女。女に近づきたい主人公。逆に女の持ち物を盗み出す主人公。また返す主人公。 第三者には理解できないこころ模様。 わかる。 気がする。

2017/11/23

ec538f32331eさんの感想

題名に当惑するが、なんと純粋で美しく、哀楽に富んだ青春小説であろうか。詩作へのひたすらな打ち込み、kに対する羨望的な友情と死別の悲しみ、異性に対する可愛い好奇心。 養父、母親、姉 に ついての記述 等から著者の優しさと謙虚な性格を感じる。 自伝的な室生の本作品は、茶の湯や酒造に使うさい川の清流の音に満ち、城下町金沢に育まれ、覗き見や、下駄泥棒等の悪戯にもかかわらず、しっとりとした落ち着きを感じさせる。

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