青空文庫

「嘆きの孔雀」の感想

嘆きの孔雀

なげきのくじゃく

初出:「少女 第八十六号(二月号)~第八十七号、第八十九号~第九十一号、第九十三号(九月号)」時事新報社、1920(大正9)年1月6日~2月、4月~6月、8月6日

牧野信一55

書き出し

一ある寒い冬の晩のこと随分寒い晩でした。私は宵の中から机の前に坐つて、この間から書かうと思つてゐるものを、今晩こそは書き出さうと、一所懸命に想を凝らして居りました。——ところが余り寒いのでついペンをとる筈の指先は火鉢の上を覆ふやうになつてしまふのでありました。窓の外には目に見ゆる程な寒気の層が湖のやうに静かにたゞずむで居りました。火鉢の上に翳して暖たまつた私の眼で、硝子越しの寒い暗い光景を眺めてゐ

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