青空文庫

「月下のマラソン」の感想

月下のマラソン

げっかのマラソン

初出:「少年 第一九四号(月世界探検号 十月号)」時事新報社、1919(大正8)年9月8日

書き出し

一……去年の春だつた。七郎は一時逆車輪を過つて機械体操からすべり落ち、気を失つた。ふと吾に返ると沢田が汗みづくになつて自分を背負つてゆく。紅く上気した沢田の頬に桜の花が影を落してゐた。——その儘又沢田の背中で気が遠くなつて、病院の一室に、心配さうに凝と自分の顔を瞶めて居る沢田を見出したまでは、七郎は何にも知らなかつた。同じ年の秋、T中学と対校マラソンが催された時、二人は選手の任を帯びて出場した。二

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