青空文庫

「べんがら炬燵」の感想

べんがら炬燵

べんがらこたつ

初出:「週刊朝日 新春特別号」1934(昭和9)年

吉川英治52

書き出し

雪の後北がわの屋根には、まだ雪が残っているのであろう、廂の下から室内は、広いので、灯がほしいほど薄暗いが、南の雀口にわずかばかりつよい陽の光が刎ね返っていた。きのうにつづいて、終日、退屈な音を繰りかえしている雨だれの無聊さをやぶるように、地面へ雪の落ちる音が、時々、ずしんと、十七人の腸にひびいた。太平記を借りうけて、今朝から手にしはじめた潮田又之丞が、その度に、きまって、書物から眸を離すので、そば

1 / 0