らいほうしゃのモデル
書き出し
御成道のうさぎや主人、谷口喜作さんから「先生はいまタカちやんと君のことを書いてゐるさうですよ」と知らされたのは、まだ空襲もさう激しくならない、たしか昭和十八年の春頃だつたと覺えてゐる。タカちやんといふのは、即ち永井荷風氏の近業「來訪者」の登場人物白井巍君のことで、當時房州保田に住んでゐたので、自ら房陽山人と號し、終戰後發表された先生の日記の中に、南總外史として現はれる人物である。あの小説を讀めばわ…