青空文庫

「酔狂録」の感想

酔狂録

すいきょうろく

吉井18

書き出し

序またしても恋物語である。しかしその物語の主人公は私ではない。それはもう今から七八年前の或る冬の夜のことであつた。私はその時分毎晩のやうに銀座界隈の酒場歩きをやつてゐたので、その夜ももうかなり遅く、尾張町の角のところにある、或る大きな、天井に近い高い壁から時時造りものの獅子が首を出して吼える仕掛けになつてゐるカフヱーで、頻にウヰスキーの杯を傾けてゐた。私もその晩かなり酔つてゐたがそこの酒場に集まつ

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