ゆきおんな
初出:「處女文壇 第一卷三號」1917(大正6)年7月1日
書き出し
一『では誰か、雪をんなをほんとに見た者はあるか?』いゝや、誰もない。しかし、『私とこの父さんは、山からの歸りに、橋向うの松原でたしかに見た。』『そんなら私とこの祖父さんなんか、幾度も/\見てる。』『いや私とこのお祖母さんは、この間の晩どこそこのお産へ行つた歸り、どこんとこの屋敷の前で、雪をんなが斯う……赤んぼを抱いて、細い聲して云つてたのを確かに聽いた。これつぱかしも嘘ではない。』斯う私達少年等は…