青空文庫

「奇病患者」の感想

奇病患者

きびょうかんじゃ

葛西善蔵14

書き出し

薪の紅く燃えてゐる大きな爐の主座に胡坐を掻いて、彼は手酌でちび/\盃を甞めてゐた。その傍で細君は、薄暗い吊洋燈と焚火の明りで、何かしら子供等のボロ布片のやうな物をひろげて、針の手を動かしてゐた。そして夫の、今夜はほとんど五合近い酒を飮んでも醉を發しない、暗い、不機嫌な、屈托顏をぬすみ視た。そして時々薪を足して、爐の火を掻き熾した。外では雪が、音も立てずに降りしきつてゐた。晝頃から降り續けたので、往

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