青空文庫

「白羊宮」の感想

白羊宮

はくようきゅう

薄田泣菫86

書き出し

この書を後藤寅之助氏にささぐわがゆく海わがゆくかたは、月明りさし入るなべに、さはら木は腕だるげに伏し沈み、赤目柏はしのび音に葉ぞ泣きそぼち、石楠花は息づく深山、——『寂靜』と、『沈默』のあぐむ森ならじ。わがゆくかたは、野胡桃の實は笑みこぼれ、黄金なす柑子は枝にたわわなる新墾小野のあらき畑、草くだものの釀酒は小甕にかをる、——『休息』と、『うまし宴會』の塲ならじ。わがゆくかたは、末枯の葦の葉ごしに、

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