青空文庫

「すみだ川」の感想

すみだ川

すみだがわ

永井荷風114

書き出し

一俳諧師松風庵蘿月は今戸で常磐津の師匠をしている実の妹をば今年は盂蘭盆にもたずねずにしまったので毎日その事のみ気にしている。しかし日盛りの暑さにはさすがに家を出かねて夕方になるのを待つ。夕方になると竹垣に朝顔のからんだ勝手口で行水をつかった後そのまま真裸体で晩酌を傾けやっとの事膳を離れると、夏の黄昏も家々で焚く蚊遣の烟と共にいつか夜となり、盆栽を並べた窓の外の往来には簾越しに下駄の音職人の鼻唄人の

2022/02/03

cdd6f53e9284さんの感想

数十年ぶりかで再読した。自分の薄れた記憶では、この小説をすっかりお糸長吉の悲恋物語として記憶に刻印してしまっていたが、今回再読して、それは物語のほんの一部、いやむしろ恋愛にまで至っていないような痛ましい片想いの物語にすぎず、その思いも報われないまま、最後などは、お糸からすっかり忘れられているのではないかと思うくらいの孤独感のなかで長吉は自分を持て余して出水の夜の街をさ迷っている。誰からも見捨てられてしまったような絶望感のなかで、もう死んでしまっても構うものかと、思いつめて冷たい泥の中を一心に歩き続ける長吉の姿が痛ましい。

2021/03/22

19双之川喜41さんの感想

 鐵道馬車が 電車に換わった頃の 話なので 変遷目まぐるしく 地誌として読むより 風情を楽しむ方が よいかもしれない。 荷風の 海外遊学あとの作品ということにも 惹かれる。

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