青空文庫

「父の帰宅」の感想

父の帰宅

ちちのきたく

初出:「文章世界」1910(明治43)年4月号

小寺菊子28

書き出し

一「あれ誰だか、兄さんは知つとるの!」「知らん!」「ちよつとそこ覗いて来ると分るわ。」小学校から帰つて来た兄と妹である。部屋一つ隔てた奥の座敷を、兄の孝一は気味わるさうにそつと覗きに行つた。「分つた?」賢こい眼を輝かせて、みよ子は微笑した。「うゝん。」孝一は頭を振つた。「をかしな兄さん、恍けとるのね、」「………………」可愛い下り眼の兄の表情がくもつて、返事をしない。「あんまりびつくりして、眼が廻つ

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