青空文庫

「桜の実の熟する時」の感想

桜の実の熟する時

さくらのみのじゅくするとき

初出:「文章世界」1913(大正2)年1~2月、1914(大正3)年5月~1918(大正7)年6月

島崎藤村306

書き出し

思わず彼は拾い上げた桜の実を嗅いで見て、お伽話の情調を味った。それを若い日の幸福のしるしという風に想像して見た。これは自分の著作の中で、年若き読者に勧めて見たいと思うものの一つだ。私は浅草新片町にあった家の方でこれを起稿し、巴里ポオル・ロワイアル並木街の客舎へも持って行って書き、仏国中部リモオジュの客舎でも書き、その後帰国してこの稿を完成した。この書は私に取って長い旅の記念だ。一日蔭に成った坂に添

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