こしゃいんのひとこといまなおせいしん
初出:「時事新報」1882(明治15)年3月27日
書き出し
明治元年正月、伏見の変乱、前将軍慶喜公は軍艦に乗て東帰、次で諸方の官軍は問罪として東海東山の諸道より江戸に入り、関東の物論沸くが如く、怒て官兵に抗せんとする者あり、恐れて四方に遁逃する者あり。江戸広しと雖ども、市に売る者なし、家に織る者なし。学者書生の如きもその行く所を知らず、大都会中復た一所の学校を見ず、一名の学士に逢わず。独り我慶應義塾の社中は、偶然の発意にして断じて世事に関せず、都下の東南芝…