はなやのまど
初出:「女人短歌 第二巻第三号」女人短歌会、1950(昭和25)年9月
書き出し
暮れかかる山手の坂にあかり射して花屋の窓の黄菊しらぎくこの歌は、昭和十一年ごろ横浜の山手の坂で詠んだのであるが、そのときの花屋の花の色や路にさした電気の白い光も、すこしも顕れてゐない。何度か詠みなほしてみても駄目なので、そのまま投げてしまつた。しかし歌はともかく、秋のたそがれの坂の景色を私はその後も時々おもひ出してゐた。まだ静かな世の中で、大森山王にゐた娘たち夫婦が私を横浜に遊びに誘つてくれた。遊…