ミイラのくちべに
初出:「中央公論」1913(大正2)年4月
書き出し
一淋しい風が吹いて來て、一本圖拔けて背の高い冠のやうな檜葉の突先がひよろ/\と風に搖られた。一月初めの夕暮れの空は薄黄色を含んだ濁つた色に曇つて、ペンで描いたやうな裸の梢の間から青磁色をした五重の塔の屋根が現はれてゐた。みのるは今朝早く何所と云ふ當てもなく仕事を探しに出た良人の行先を思ひながら、ふところ手をした儘、二階の窓に立つて空を眺めてゐた。横手の壁に汚點のやうな長方形の薄い夕日がぼうと射して…
阿波のケンさん36さんの感想
売れない文人同士の生活、特に女性が芸術家肌で我の強い場合ケンカばかりだ。作者も男性遍歴の多い女性だ。新しい女性とは自分に能力があれば男性遍歴がしたいのも願望としてあったようだ。