よるのみちづれ
初出:「群像」1950(昭和25)年2月号
書き出し
走り過ぎる自動車のクラクション。夜ふけの町かど。深い闇の奧に白くもうろうとそびえ立つているビルディング。こちらは、夜空に黒くおしつぶされた家々。とぼしい街燈が、あたりを明るく照し出すためよりも、かえつて暗くするためのように、ポツリポツリとついている。なんの物音もない。いちばん近い街燈の丸い光の中に、中年の男が一人、自然木のステッキをついて立つている。古い背廣にヨレヨレのレインコートを着て、飲みつづ…