れいてきほんのうしゅぎ
初出:「交友会雑誌」1907(明治40)年11、12月
書き出し
一荒漠たる秋の野に立つ。星は月の御座を囲み月は清らかに地の花を輝らす。花は紅と咲き黄と匂い紫と輝いて秋の野を飾る。花の上月の下、潺湲の流れに和して秋の楽匠が技を尽くし巧みを極めたる神秘の声はひびく。遊子茫然としてこの境にたたずむ時胸には無量の悲哀がある。この堪え難き悲哀は何をか悲しみ何をか哀れむ。虫の音は、花の色は、すべての宇宙の美は、虚無でない、虚無でない「美」の底に悲哀が包まれたるは何の意味で…