ははたち
初出:「文學界」1936(昭和11)年9月号
書き出し
……無常の人間に知られずに隠れてゐて、わたし共も名を云ひたくない神です。その家へ往くには、あなた余程深く摩り込むのです。そんな物に用が出来たのは、あなたのせゐだ。——『フウアスト』第二部1二つの死が私たちの結婚に先立つた。私たちは幼児の心を喪つた婚約者だ。しかし、もはや私たちのあひだには、胸をときめかす何の珍らしい期待もない、といふ君のことばは、正しいだらうか。どうかそれが、君の疲労の語らせた言葉…