かいふくき
初出:「文藝 第五号」1930(昭和5)年2月
書き出し
美術を介したる人間の像に於ては、静安なのが肉体の第一の美である。——アングル随想録一九二八年六月七日(熱海)大いなる熱が私を解放した。私は再び鎔和された人間だ。いま霧のなかから静かに私の前にたち現れるのは、私の曾て知らなかつた新たな廻転をもつ世界である。その世界にはまだ何一つとして名のついてゐる物はない。この私が多分すべてを名づける者になるであらう。が今のところ私はただ、眼の前にひろがつてゆく此の…