青空文庫

「贋物」の感想

贋物

にせもの

初出:「早稲田文学」1917(大正6)年2月

葛西善蔵57

書き出し

一車掌に注意されて、彼は福島で下車した。朝の五時であった。それから晩の六時まで待たねばならないのだ。耕吉は昨夜の十一時上野発の列車へ乗りこんだのだ、が、奥羽線廻りはその前の九時発のだったのである。あわてて、酔払って、二三の友人から追いたてられるようにして送られてきた彼には、それを訊ねている余裕もなかったのだ。で結局、今朝の九時に上野を発ってくる奥羽線廻りの青森行を待合せて、退屈なばかな時間を過さね

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