青空文庫

「遁走」の感想

遁走

とんそう

初出:「新小説」1918(大正7)年9月

葛西善蔵30

書き出し

一神田のある会社へと、それから日比谷の方の新聞社へ知人を訪ねて、明日の晩の笹川の長編小説出版記念会の会費を借りることを頼んだが、いずれも成功しなかった。私は少し落胆してとにかく笹川のところへ行って様子を聞いてみようと思って、郊外行きの電車に乗った。笹川の下宿には原口(笹川の長編のモデルの一人)が来ていた。私がはいって行くと、笹川は例の憫れむようなまた皮肉な眼つきして「今日はたいそうおめかしでいらっ

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