しゃぼてんのはな
初出:「猟奇」1932(昭和7)年1月
書き出し
(一)閑枝は、この小さな北国の温泉町へ来てからは、夕方に湖水のほとりを歩くことが一番好きであった。丘一つ距てた日本海に陽が落ちると、見る見るうちに湖面は黒くなって、対岸の灯が光を増すのであった。陽が、とっぷりと暮れる。芦の葉ずれ、にぶい櫓声、柔かな砂土を踏むフェルト草履の感じ、それらのすべては、病を養う閑枝にとっては一殊淋しいものではあったが、また自分の心にピッタリと似合った好もしい淋しさでもあっ…
8eb05d040692さんの感想
引き込まれるように読みました。とても面白かったです。