青空文庫

「巷の声」の感想

巷の声

ちまたのこえ

書き出し

日々門巷を過る物売の声もおのずから時勢の推移を語っている。下駄の歯入屋は鞭を携えて鼓を打つ。この響は久しく耳に馴れてしまったので、記憶は早くも模糊として其起源のいつごろであったかを詳にしない。明治四十一年の秋、わたくしが外国から帰って来た時、歯入屋は既に鞭で鼓を打ちながら牛込辺を歩いていたようである。その頃ロシヤのパンパンと呼んで山の手の町を売り歩く行賈の声がわたくしには耳新しく聞きなされた。然し

2017/04/16

f47720879525さんの感想

過ぎ逝く時代を惜しむしみじみした哀感が漢文脈にもられてしみてくる。現代の世相からは失われてしまった音に荷風の好尚がにじんている。荷風は耳がよいのだ。

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