ひばりびょういん
初出:「文芸汎論」1941(昭和16)年6月号
書き出し
銀の鈴を振りながら、二頭の小山羊は花やリボンで飾られてゐる大きな乳母車を牽いて行つた。その後には、青い服を※つた鳩のやうな婦人がもの静かに従いて歩いた。むかうの峰には乳白色の靄がかかつてゐたが、こちらの空は真青に潤んでゐた。澄んだ空気の中に草の芽や花の蕾の匂ひが漾つて、しげみの中では鶯が啼いてゐる。車のバネの緩い動揺や、鈴の音に、すやすやと睡つてゐた空二は、ふと眼を見開いた。それから、車のすぐ側に…